【2027年施行】特定技能「倉庫管理」分野での外国人材受け入れガイド
作成日:2025年5月30日
最終更新日:2025年5月30日

合同会社エドミール 代表社員
武藤拓矢
外国人技能実習制度の管理団体で5年勤務、2019年に合同会社エドミール(AIDE MILLE)を立ち上げる。
600名を超える外国人採用支援実務経験から、制度の理解と外国人人材の現場オペレーションに強みを持つ。建設業、飲食料品製造業、外食業の経験豊富。
特定技能制度の対象分野として、2027年度から「倉庫管理」分野が正式に追加される予定です。EC市場の拡大や物流拠点の増加により、倉庫作業の担い手不足が深刻化する中、外国人材の即戦力としての活用が制度上可能になります。
本記事では、物流業界の採用担当者向けに、倉庫管理分野における特定技能制度の概要から導入準備のポイントまでを詳しく解説します。
特定技能制度とは?
特定技能制度は、2019年に日本政府が創設した在留資格制度で、人手不足が深刻な分野において、技能と日本語能力を有する外国人材の受け入れを可能にする制度です。
2027年には、「倉庫管理」「廃棄物処理」「リネン供給」の3分野が新たに対象に追加され、制度対象分野は計19分野へと拡大する予定です。
倉庫管理分野が対象に追加された背景
倉庫業界では、以下のような要因により人材不足が常態化しています:
- ネット通販・EC市場の拡大による出荷量の急増
- 地方拠点における人手確保の困難
- 高齢化と若年層の敬遠傾向
こうした課題を受け、政府は倉庫管理業務を「定型的かつ安全管理が確立された作業」として特定技能の対象に位置づけ、制度化に踏み切りました。
特定技能「倉庫管理」分野の対象業務
特定技能制度において従事可能とされる倉庫作業は、以下のような現場業務です:
- 仕分け・ピッキング作業
- 入出庫・棚入れ管理
- ラベル貼付・梱包作業
- 出荷準備および搬送補助
これらはすでに多くの外国人アルバイトが従事している業務であり、制度化により長期的・安定的な雇用が可能になります。
制度開始までのスケジュールと準備事項
制度施行は2027年4月以降が予定されています。企業側は2026年度中に、以下の準備を進めておくことが重要です:
- 支援計画の策定・登録支援機関の選定
- 多言語マニュアル・現場指導体制の整備
- 外国人との雇用契約準備と社内研修
取得が必要な試験と要件
在留資格「特定技能1号」を取得するには、以下の2つの要件を満たす必要があります:
- 技能評価試験: 倉庫作業に関する基礎知識・安全衛生の理解
- 日本語能力: JLPT N4 または JFT-Basic(A2相当)
これらの試験は2026年度から国内外で実施開始予定です。
企業側の受け入れ条件
企業が外国人材を受け入れるには、「特定技能所属機関」として以下の条件を満たす必要があります:
- 法令遵守(労基法・安衛法・社保など)
- 日本人と同等以上の待遇(給与・福利厚生)
- 雇用契約書の明示・支援計画の実施
- 過去に不適切な外国人雇用歴がないこと
登録支援機関の活用とメリット
外国人支援が不慣れな企業では、「登録支援機関」を活用することで負担を軽減できます。主な支援内容:
- 入国前オリエンテーション
- 住居・銀行・携帯契約のサポート
- 日本語学習機会の提供
- 定期的な面談・相談対応
制度上は委託が可能ですが、企業側も支援内容を把握・管理することが求められます。
倉庫管理業務における特定技能活用のメリット
- 構造的な人材不足の解消
- 勤勉かつ継続的な雇用による定着率向上
- 繁忙期・夜勤対応など柔軟なシフト運用
- 属人化の回避とマニュアル業務の安定化
制度に基づいた適切な雇用によって、従来のアルバイト依存からの脱却も可能になります。
注意点と法的リスク
特定技能制度の運用にあたっては、以下の点に注意が必要です:
- 不法就労防止(在留期限・契約内容の管理)
- 失踪時の入管報告義務(14日以内)
- 時間外労働・休日手当の適切な支払い
これらに違反した場合、企業名の公表や受け入れ停止措置など、法的リスクも伴います。
他社の先行事例と物流業界の展望
大手物流会社ではすでに技能実習生やアルバイト外国人の導入が進んでおり、教育・通訳体制を整備することで高い生産性を実現しています。
今後、倉庫作業の一部自動化(物流DX)が進む中でも、例外処理や人手による対応が必要な場面は残ります。特定技能外国人はその「人の力」を支える重要な担い手となります。
まとめ:2027年開始の制度を見据えた早期準備を
特定技能「倉庫管理」分野は、2027年から制度化が始まる新市場です。今のうちから受け入れ環境を整えることで、優秀な人材を先行して確保できる可能性が高まります。
EC・物流需要が今後も伸びる中で、現場の労働力を安定化させたい企業は、ぜひ制度導入を前向きに検討してください。