【図解】在留資格「特定技能」とは?1号と2号の違い・義務的支援・費用相場・国籍選び・流れを解説

作成日:2025年7月17日
最終更新日:2025年7月17日

「人手不足を解消したい」「即戦力となる外国人材を採用したい」とお考えの企業様に注目されているのが、在留資格『特定技能』です。

しかし実際には「制度が複雑でよく分からない」「技能実習や技人国との違いは?」「費用や国籍の選び方は?」など、多くの疑問や不安の声が寄せられています。

本記事では、特定技能制度の概要から、技能実習・技人国との違い、登録支援機関の役割、費用相場、人気の国籍傾向までを網羅的に解説します。

これから外国人材の受け入れを検討されている方にとって、制度理解と適切な運用のヒントとなる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

在留資格とは?

外国人が日本に滞在し、働く・留学などの特定の活動を行うための許可証で、2025年7月時点では全29種類あります。

大きく分けると「就労系」と「非就労系」に分類され、在留資格「特定技能」は「就労系在留資格」の1つです。

在留資格「特定技能」とは?

深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性や技能を持つ外国人材を即戦力として受け入れるための在留資格で、重要なポイントが3つあります。

  • 「特定技能1号」と「特定技能2号」
  • 深刻な人手不足な16の分野が対象
  • 一定の専門性や技能を持つ外国人材

特徴①「特定技能1号」と「特定技能2号」

特定技能制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類が存在します。簡単に言えば、1号からスキルアップした人材が2号へ移行可能という構造です。こちらの比較表をご覧いただければ、その違いが一目でわかります。

特定技能1号と2号の最大の違いは在留期間の制限です。1号は通算5年が上限ですが、2号は更新が無制限で、長期的な就労が可能です。さらに2号では配偶者や子どもの帯同も認められ、安定した生活が実現できます。

ただし、2号への移行は容易ではありません。いずれも技能評価試験の合格が必要で、2024年12月時点で1号の在留者は251,594人に対し、2号はわずか153人にとどまっています。

背景には、対象職種の少なさ試験・支援体制の未整備があります。ただ近年は制度も成熟しつつあり、今後は移行支援の充実が進む見通しです。

外国人材の長期活用を目指す企業にとっては、2号へのキャリアパスを見据えた採用・育成が重要な戦略となるでしょう。

特徴②深刻な人手不足な16の分野が対象

特定技能は「深刻な人手不足」の労働力解消を掲げていることから、特定技能外国人が働ける業種は全部で16種類あります。

よくある誤解として、特定技能の業種は業務内容単位で付与されるもので、対象の業種だからといって横断的に業務をすることはできません。例えば、ホテルで料理を提供する場合は「外食業」の試験を合格する必要があります。「宿泊」の在留資格を取得しているからと、ホテルの調理を任せることはできません。

「特定技能の宿泊の試験を合格したから、ホテルの業務は全て任せられるんでしょ」誤った解釈をして雇用すると、最悪の場合は特定技能外国人の雇用が5年できなくなる可能性があるため十分注意しましょう。

特徴③一定の専門性や技能を持つ外国人材

特定技能1号で就労するには、次の2つの要件を満たす必要があります。

日本語レベル 生活や業務に支障のないN4相当以上
技能テスト 職種ごとの技能評価試験に合格

ただし、試験合格はあくまで基礎的な能力の証明であり、即戦力としての実務経験があるとは限りません。そのため、採用後の育成体制も重要となります。

続いて、特定技能外国人を雇用する上で最も重要な義務的支援について触れていきます。

特定技能の義務的支援とは

特定技能外国人を雇用する企業(受け入れ機関)は、就労だけでなく日本での生活を支えるための「義務的支援」を行う必要があります。その支援内容は大きく10項目に分かれます。

中でも特に重要なのが以下の3点です。

  • 雇用条件の明示と労働環境の整備
  • 住居・ライフラインなどの生活支援
  • 定期的な面談と法務省への報告

ただ、制度が複雑で「自社では対応しきれない」という企業も少なくありません。そうした場合に、義務的支援を代行できるのが登録支援機関です。

登録支援機関とは

登録支援機関は、受け入れ企業に代わって特定技能制度に関する支援業務を行う、出入国在留管理庁に認可された専門機関です。制度運用の知識や外国人支援のノウハウを持ち、企業の負担を軽減します。

主な支援内容は以下の5つです。

  1. 人材確保
  2. 採用マッチング支援
  3. 在留資格申請支援
  4. 生活立ち上げ支援
  5. 義務的支援・定期フォロー

それぞれの支援内容を見ていきましょう。

支援① 人材確保

まずは、企業の条件(職種・勤務地・日本語レベルなど)に合った人材の募集から始まります。適切な国籍の選定や、信頼できる送出機関・現地パートナーとの連携も重要です。制度や情勢を踏まえた戦略的な募集が成果に直結します。

支援② 採用マッチング支援

書類選考やオンライン面接を通じて採用候補を選定します。この段階では、雇用条件・業務内容を正確に伝えることが非常に重要です。契約書や就業規則は母国語に翻訳し、通訳を用意することで、認識のズレを防ぎます。

支援③ 在留資格申請支援

採用が決まった後は、在留資格「特定技能」の取得に向けた申請手続きをサポートします。許可までは通常2〜3ヶ月を要するため、早期の準備が肝心です。あわせて入国後すぐに生活できるよう、住居の手配も進めておきます。

支援④ 生活立ち上げ支援

来日後は、生活基盤を整える支援が求められます。主な支援内容は以下の通りです。

  • 住民票の登録手続き
  • 携帯電話の契約
  • インターネット環境(Wi-Fi)の整備

これらは義務的支援として法令で定められており、確実な実施が必要です。

支援⑤ 定期面談・その他支援

就労後も外国人材が安心して働けるよう、定期的なフォローが欠かせません。最低でも3ヶ月に1回の面談を行い、職場や生活での課題を早期に把握・対応します。また、法務省への定期報告も登録支援機関の重要な役割の一つです。

以上が登録支援機関による主な支援内容です。

次に、多くの企業が悩む「特定技能・技能実習・技人国」の違いについて解説します。

特定技能・技能実習・技人国の違い

就労系の在留資格で最も割合が多いのが「特定技能」「技能実習」「技人国(技術・人文知識・国際業務)」であり、どの在留資格を活用した方が良いか検討している方も多いと思います。

在留資格 人数 割合
特定技能 251,747人 7.0%
技能実習 425,714人 11.9%
技術・人文知識・国際業務 394,295人 10.0%

結論としては、労働状況によって確認した方が良いのか、

違い①特定技能と技能実習の違い

項目 特定技能(1号) 技能実習
制度の目的 労働力不足を補うための即戦力外国人の受け入れ 技能移転を通じた国際貢献
在留期間 最大5年(更新可能)
※2号に移行すれば無期限
最大5年(1年+2年+2年)
対象職種 12分野(介護・外食・建設・農業など) 約80職種150作業以上
家族の帯同 不可(※2号では可) 不可
受け入れ企業の要件 技能試験・日本語試験の合格者を受け入れ
登録支援機関の支援が必要
監理団体と連携し、実習計画の認定が必要
外国人側の要件 技能評価試験と日本語試験(N4以上)に合格 18歳以上で健康、学歴や経験は問われない
支援体制の義務 登録支援機関(または企業自ら)の支援が義務 監理団体が生活支援や相談対応を実施
転職の可否 同業種であれば可(条件あり) 原則不可(例外的に変更可能)
技能修得の評価 試験制度により客観的に評価 実習計画に基づく評価・監査が中心
制度上の位置づけ 就労目的の在留資格 国際貢献を目的とした研修制度

違い②特定技能と技人国の違い

項目 特定技能(1号) 技術・人文知識・国際業務(技人国)
制度の目的 人手不足分野への即戦力の確保 専門的・技術的分野の高度人材の受け入れ
対象業種 12分野限定(介護、外食、建設、製造など) ホワイトカラー職種(エンジニア、営業、通訳など)
学歴・資格要件 学歴不問
代わりに技能試験と日本語試験が必要
大学卒業または実務経験10年以上が基本
在留期間 最長5年(1号)
2号に移行すれば更新制限なし
1〜5年で更新可能(制限なし)
家族の帯同 不可(2号では可) 条件により配偶者・子の帯同が可能
転職の可否 同じ業種内でのみ転職可(届出が必要) 業種が適合すれば自由に転職可
支援体制 登録支援機関による支援が義務 支援義務なし(企業主導)
日本語要件 日本語試験(例:N4レベル)に合格 業務上必要なレベル(試験要件なし)
在留資格の分類 「特定技能」=単純労働も含む就労ビザ 「在留資格」=専門職向け就労ビザ

特定技能の費用相場

特定技能の費用は「初期費用」と「運用費用」に分けられます。それぞれの費用について解説します。

費用①初期費用

人材紹介料は登録支援機関や職種によって幅があり、介護など有資格者が求められる業界では60万円前後になることもあります。導入費用は、面接調整や書類作成、翻訳、日本語教育の初期サポートなどに充てられ、人材紹介料に含まれている場合もあります。在留資格申請は自社対応も可能ですが、行政書士に外注すると10〜20万円程度が相場です。

渡航費は国ごとに異なり、企業が全額負担するケースもあれば、本人負担とする場合もあります。住居初期費用は敷金・礼金・仲介手数料に加え、生活用品の準備費も想定すると20〜30万円前後を見込む必要があります。来日後すぐに生活を始められるよう、住環境の整備は定着支援の観点からも重要です。

費用②運用費用

最も気になる全国平均の登録支援委託費用の費用相場28,386円でした。詳細としては、義務的支援に含まれる内容から、日本語・特定技能2号の試験に向けての支援など、登録支援機関ごとに支援内容は異なります。

【運用費用の全国平均】

特定技能外国人1人当たりの
月額支援委託料
割合
5,000円以下 0.9%
5,000円超~10,000円以下 6.4%
10,000円超~15,000円以下 9.5%
15,000円超~20,000円以下 25.3%
20,000円超~25,000円以下 26.2%
25,000円超~30,000円以下 20.3%
30,000円超え 11.5%

出典:特定技能制度の現状について(出入国在留管理庁)

特定技能外国人の国籍選び

続いては特定技能外国人の国籍選びについてです。まずは現在の特定技能外国人の国籍の割合を見ていきましょう。

人数 割合
ベトナム 133,478人 46.9%
インドネシア 53,538人 18.8%
フィリピン 28,234人 9.9%
ミャンマー 27,348人 9.6%
中国 17,761人人 6.2%

出典:特定技能制度運用状況①(出入国在留管理庁)

2024年時点における特定技能外国人の国籍別受け入れ数では、依然としてベトナム人材が最多となっており、制度開始当初からその傾向は続いています。

一方で、近年は国別の伸び率に変化が見られます。2023年から2024年にかけての増加率では、ベトナムは123%と横ばい傾向にあるのに対し、ミャンマーが241%、インドネシアが217%と急成長を見せており、今後の人材確保において注目すべき国となっています。

特定技能外国人が入社するまでの流れ

特定技能外国人が実際に入社するまでには、主に5つのステップがあります。全体としては最低でも3ヶ月、長い場合は5ヶ月程度かかるのが一般的です。

特に時間を要するのが在留資格の取得手続きで、許可が下りるまでに最大3ヶ月ほどかかります。書類準備や契約など前後の準備期間も含めると、契約から入社までは3〜5ヶ月を見込んでおく必要があります。

まとめ

2019年に始まった特定技能制度は、今や多くの企業が活用する在留資格の一つとなりました。特定技能は即戦力となる外国人材の確保を目的とした制度で、特に人手不足が深刻な14業種に限定して受け入れが行われています。

1号・2号といった等級の違いや、技能実習・技人国との比較によって、自社にとってどの制度が最適かを見極めることが重要です。また、外国人材の受け入れには、在留資格の申請から生活支援に至るまで多くの支援業務が発生します。これらをカバーするためには、登録支援機関の活用も有効な手段です。

費用面では、初期費用・運用費用ともに業種や国籍によってばらつきがあり、相場を把握した上での計画が不可欠です。特に支援委託費は平均約28,000円/月となっており、支援内容とのバランスを見て判断することが求められます。

また、受け入れ国籍についても、依然としてベトナムが最多ですが、ミャンマーやインドネシアの伸び率が非常に高く、今後の人材調達の鍵を握る国となる可能性があります。

最後に、特定技能外国人の受け入れには入社まで3〜5ヶ月のリードタイムがかかる点を踏まえ、早めの準備と制度理解が成功のポイントです。支援体制を整えたうえで、長期的な人材活用戦略として特定技能を位置づけていくことが、企業の成長に繋がるでしょう。