建設で外国人人材を採用する方法【メリット・デメリット、費用、流れ】

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公共・民間ともに案件は堅調でも、現場要員(とくに中堅層・多能工・夜間/交替)の不足が続いています。安全基準と工期を守りつつ即戦力を確保することが、建設企業の最重要課題になっています。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

外国人建設人材を採用する4つの方法

外国人が日本の建設現場で働くには在留資格が必要です。役割(即戦力/育成)や工期・工区の期間に合わせて選定しましょう。

結論として、採用しやすさ×即戦力×在留期間のバランスがよく、初採用にも扱いやすいのは「特定技能1号(建設分野)」です。

武藤 拓矢

特定技能専門家

武藤 拓矢

初めての配属は「特定技能1号(建設)」が現実的。技能試験で基礎技能が可視化され、登録支援機関と連携すれば生活・職場サポートの型化もしやすく、工期にあわせた短期立ち上げが可能です。

在留資格① 特定技能(1号)〈建設〉

人手不足分野の即戦力を確保するスキーム。型枠・鉄筋・とび・左官・配管・内装仕上・機械土工 などで受入れ可。技能試験/日本語試験合格者や技能実習修了者が対象で、最長5年就労可能。現場の基本作業で即戦力になりやすい。

在留資格② 技術・人文知識・国際業務(技人国)

設計・積算・施工管理・BIM/CIM・品質/安全管理・通訳PMOなど専門職に適合。長期のキャリア設計がしやすく、工期短縮・品質安定の要に。

在留資格③ 技能実習(建設系)

育成型スキーム。現地募集→来日前研修→配属。在留は期間限定のため、OJT計画と多能工化で効果を最大化。将来の特定技能への移行も見据えやすい。

在留資格④ 身分系(永住・定住・日本人/永住者の配偶者 等)

就労制限がなく、夜間・長期工事・繁忙期のシフト設計に強い。長期定着を見込みやすい層。

外国人建設人材のメリットとデメリット

メリットは人員計画の安定と工期順守、デメリットは採用・教育コストと安全/品質ギャップ安全SOP×写真/動画教材×OJTで立ち上げを平準化します。

採用メリット

交替・夜間・多工区の要員計画が安定し、工期順守・出来形品質・手戻り削減に直結。多国籍チームは5SやKYの気づきが増え、不安全行動の見える化や改善提案も増えます。

採用デメリット

大きくコスト基準ギャップ。初期投資は必要ですが、支援機関活用と運用設計で中長期の定着・品質向上に転換可能です。

採用・教育コスト(目安)

国内採用より、在留手続・ビザ・渡航/住居初期費が必要。紹介/委託費が発生するケースも(自社・現地直採用で圧縮可)。制度別の目安は以下。

在留資格 費用の目安
1年目 2年目以降
特定技能(建設) 約40〜80万円 約25〜50万円
(登録支援を外部委託する場合)
技術・人文知識・国際業務 約20〜60万円 約5〜20万円
技能実習(建設) 約50〜90万円 約30〜60万円
身分系(永住・定住 等) 約10〜30万円 約0〜10万円

加えて、安全・品質教育の教材整備(ピクト/写真/動画SOP、KYT・TBM)、多言語掲示・現場通訳寮/社宅などの運用コストを想定。標準化で早期平準化を狙いましょう。

安全・品質ギャップの是正

保護具(ヘルメット/安全帯/保護メガネ/安全靴/手袋)・高所/足場・重機接触・熱中症・化学物質SDS・感電・開口部養生などで差が出やすい。写真/動画SOP、チェックリスト、TBMのロールプレイ、定期フィードバックで矯正可能。

記録・報告・CCUSの活用

出来形・品質記録・KY結果・災害/ヒヤリハット報告を「やさしい日本語+ピクト」で運用。建設キャリアアップシステム(CCUS)で技能・就業履歴を見える化し、評価・手当と接続すると定着に効きます。

建設で応募が多い主な国籍

ベトナム/ミャンマー/インドネシア/フィリピン/ネパールの応募層が厚い傾向。英語圏・中華圏は通訳PMOや購買・品質補助で適性が出るケースも。

制度別の人材プールの違い

特定技能(建設)は技能試験経由で現場立ち上がりが早い。技人国は施工管理・設計/積算・BIM/CIMで強み。技能実習は育成計画とセットで多能工化が進めやすい。

外国人建設人材の採用にかかる費用

給与・社保を除く採用〜運用コストは、在留手続・渡航/住居初期費・紹介/登録支援の有無で変動。登録支援機関の委託費(月2〜3万円/名 目安)は生活/職場サポートの外部化コスト(自社実施なら不要)。

※金額は相場目安。地域・職種・採用手法(自社/現地直/紹介)で前後します。

外国人建設人材の採用までの流れ

工期・工区の工程(基礎→躯体→仕上)から逆算して、募集・選考・在留手続きを設計。概ねの目安は以下。

在留資格 目安期間
特定技能(建設) 約1〜2か月
技術・人文知識・国際業務 約1〜3か月
技能実習(建設) 約6か月〜1年
身分系(永住・定住 等) 数週間〜1か月

流れ① 特定技能(建設)

候補者選定→面接(ロールプレイ推奨:足場・玉掛け手順・重機接触回避・熱中症対策)→在留申請→入国/雇用契約→配属。短期立ち上げに向きます。

流れ② 技術・人文知識・国際業務

職務定義/学歴・実務要件確認→面接→在留申請(変更/認定)→入社。施工管理・BIM/CIM・品質/安全・通訳PMOなど専門領域を担う。

流れ③ 技能実習(建設)

送り出し機関・監理団体と連携して選抜→面接→現地研修(3〜6か月)→在留認定→来日。6か月〜1年が一般的。育成計画と連動させる。

流れ④ 身分系

就労制限なしでシフト柔軟。就業規則・安全/品質SOPの早期習得と、工区間の応援体制を整備。

建設で活用しやすい支援策(例)

初期コストや教育費は、国・自治体の施策で一部軽減できる場合があります(地域差あり)。

多言語・受入体制整備補助(自治体)

上限金額 上限 約30〜100万円(自治体により異なる)
主な対象 多言語掲示・動画SOP・通訳/翻訳ツール・寮/社宅初期費・送迎/通勤手段 整備 等
窓口例 都道府県の建設・労働部局、商工団体 等

人材定着・安全品質教育の助成(国/自治体)

活用イメージ KYT/TBM教育、保護具・熱中症対策、玉掛け・フルハーネス等の技能講習、日本語教育、評価制度、CCUS活用
留意点 公募要領を早めに確認し、採用計画と交付スケジュールを同期させる

建設人材採用のまとめ

  • 制度選定:初採用/即戦力は特定技能(建設)が現実的。施工管理・設計/積算は技人国、育成前提は技能実習
  • 人材プール:ベトナム/ミャンマー/インドネシア/フィリピン/ネパールが中心。
  • 費用感:初年度は制度/採用手法で差(例:特定技能 約40〜80万円)。登録支援の外部化で月次費用が発生。
  • リスク対策:写真/動画SOP×KYT/TBM×やさしい日本語で安全・品質を短期平準化。CCUSで技能の見える化と評価連動。
  • 支援策:多言語/受入体制補助や教育助成で初期負担を軽減。

工期から逆算した採用設計と、SOP/教育の型化が成功の鍵。制度の特徴と費用・期間を押さえ、文化・言語ギャップを仕組みで埋め、災害ゼロ・出来形品質・工期順守の実現につなげましょう。