特定技能(介護)2026年最新の制度・要件・申請ガイド
更新
特定技能(介護)は、深刻な介護人材不足を背景に2019年に創設された在留資格です。訪問系を除く介護施設での身体介護・生活援助が認められ、2026年時点で受け入れ実績は着実に拡大しています。本記事では制度要件・試験・受け入れコスト・キャリアパスを、事業者と求職者の両視点から具体的に解説します。
合同会社エドミール 代表社員
武藤 拓矢
2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。
武藤 拓矢のプロフィール介護分野の在留資格の全体像
介護分野で就労できる在留資格は複数あり、それぞれ要件・業務範囲・滞在条件が大きく異なります。下表で4種類を比較し、特定技能の位置づけを確認しましょう。
| 在留資格 | 業務範囲 | 在留期間 | 家族帯同 | 主な要件 |
|---|---|---|---|---|
| EPA(経済連携協定) | 身体介護・生活援助(候補者段階は研修含む) | 最長4年(候補者)、資格取得後は「介護」へ移行 | 不可(候補者段階) | フィリピン・インドネシア・ベトナム国籍限定、送出し機関経由 |
| 技能実習(介護) | 身体介護等(1号は一定制限あり) | 最長5年(1〜3号) | 不可 | JLPT N4以上、監理団体経由 |
| 特定技能(介護) | 身体介護・生活援助等(訪問系不可) | 1回最長1年(通算上限なし・更新可) | 不可(1号) | 介護技能評価試験・介護日本語評価試験・JLPT N4以上 |
| 介護福祉士(在留資格「介護」) | 就労制限なし | 更新制(永住申請可) | 可 | 介護福祉士国家資格の取得 |
技能実習は2027年をめどに「育成就労」制度へ移行する方針が固まっており、制度設計の変化が介護分野にも影響します。出入国在留管理庁:特定技能(介護)在留資格申請手続き
特定技能(介護)の制度概要・背景
特定技能(介護)は、構造的な人材不足を解消するための政策的在留資格として2019年4月に施行されました。
介護人材不足の実態
厚生労働省の推計によると、2040年には介護人材が約69万人不足すると見込まれています。厚生労働省:介護分野における特定技能外国人の受入れについて高齢化の加速と生産年齢人口の減少が重なるなか、国内人材だけでは補いきれない状況が続いています。こうした背景から、外国人材の受け入れ拡大を制度として整備する必要が生じました。
特定技能(介護)の概要
在留資格「特定技能1号(介護)」では、身体介護(入浴・排泄・食事介助など)、生活援助、機能訓練補助、利用者・家族との相談対応などが認められています。1回の在留期間は最長1年で、更新回数に上限はなく、能力要件を満たし続ける限り日本での就労を継続できます。出入国在留管理庁:特定技能運用要領(介護分野)
特定技能(介護)の特徴・メリット・デメリット・注意点
受け入れ事業者と外国人求職者では、制度から得られるメリットと注意すべき点が異なります。
受け入れ事業者(介護施設)側の視点
- 即戦力として採用できる
技能実習と異なり、「育成」が目的ではなく「就労」が前提の資格です。一定の介護技術と日本語力が確認済みの人材を採用できます。 - 在留期間の更新制限がない
通算5年という上限があった技能実習とは異なり、要件を満たせば継続就労が可能です。長期的な人材計画を立てやすくなります。 - 支援計画・協議会加入の義務がある
登録支援機関との連携や介護分野協議会への加入が必須です。管理コストと事務負担が発生する点は留意が必要です。 - 訪問系サービスへの配置不可
訪問介護・訪問入浴介護など「訪問系」サービスでの就労は認められていません。対象施設は入所・通所・居住系施設に限定されます。
外国人求職者側の視点
- 通算在留期間に上限がなく長期就労が可能
同一分野で継続的に働き、スキルと実績を積み上げられます。介護福祉士資格取得後は在留資格「介護」へ移行でき、永住への道も開けます。 - 家族帯同は不可(1号)
特定技能1号では配偶者・子の帯同が認められていません。家族と一緒に暮らしたい場合は、介護福祉士資格取得後の在留資格「介護」への移行を目指す必要があります。 - 試験合格が必要(免除規定あり)
介護技能評価試験・介護日本語評価試験の両方に合格しなければなりません。ただし、EPA介護福祉士候補者や技能実習介護2号修了者は試験免除の特例があります。
技能試験・日本語試験の詳細と合格に向けた準備
特定技能(介護)の取得には、3種類の試験すべてに合格するか、所定の免除要件を満たす必要があります。
必要な試験一覧
| 試験名 | 実施機関 | 合格基準 | 受験料(目安) |
|---|---|---|---|
| 介護技能評価試験 | 厚生労働省(委託:公益財団法人 介護労働安定センター) | 満点の60%以上 | 国内:5,000円程度、海外:現地規定による |
| 介護日本語評価試験 | 同上 | 満点の60%以上 | 国内:2,000円程度、海外:現地規定による |
| 日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(A2以上) | 公益財団法人 日本国際教育支援協会 ほか | N4合格またはA2スコア以上 | JLPT:6,500円(国内) |
介護技能評価試験・介護日本語評価試験は国内と海外(フィリピン・カンボジア等)で実施されており、試験日程は公式サイトで随時公開されます。厚生労働省:介護技能評価試験(特定技能)公式サイト
JLPT(日本語能力試験)は年2回(7月・12月)、国内外の多数の会場で実施されます。日本語能力試験(JLPT)公式サイト
試験免除の規定
以下のいずれかに該当する場合、介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語試験がすべて免除されます。
- EPA介護福祉士候補者として在留歴がある者
所定の研修・試験を経た候補者は、特定技能への移行時に試験免除が認められます。 - 技能実習「介護」2号を修了した者
介護職種の技能実習2号を良好に修了すれば、3種類の試験がすべて免除となり、即座に特定技能1号へ移行できます。 - 介護福祉士養成施設を修了した者
介護福祉士の国家資格取得者は試験免除の対象です(この場合は在留資格「介護」の取得も選択肢になります)。
合格に向けた準備のポイント
介護技能評価試験は、入浴・排泄・食事介助などの基本介護技術と安全管理に関する知識を問います。過去問を繰り返し解き、介護の専門用語を日本語で理解することが合格への近道です。日本語については、JLPT N4の語彙・文法に加え、介護現場で使われる敬語や報告表現の練習も効果的です。
受け入れ機関・事業所の要件と協議会加入
介護施設が特定技能外国人を受け入れるには、法令上の要件をすべて満たす必要があります。要件を満たしていない施設への配置は認められません。
受け入れ可能な施設の種類
特定技能(介護)が認められる施設は、介護保険法・老人福祉法に基づく下記の施設・事業所です。
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設(介護医療院含む)
- 通所介護(デイサービス)・通所リハビリ
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護など訪問系サービスは対象外です。利用者の自宅へ1対1で訪問するサービスは、安全管理上の理由から特定技能外国人の配置が認められていません。
介護分野協議会への加入義務
受け入れ機関は、初めて特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に、厚生労働省が所管する「介護分野における特定技能外国人の受入れに関する協議会」への加入が義務付けられています。協議会では制度の適正運用に関する情報共有・監督が行われます。加入手続きはオンラインで完結し、費用は無料です。
支援計画の作成と登録支援機関の活用
受け入れ機関は、外国人の生活・就労を支援する「1号特定技能外国人支援計画」を作成・実施しなければなりません。支援計画の作成・実施を登録支援機関に全部委託することもでき、多くの介護施設が専門機関を活用しています。
受け入れにかかるコストの目安
特定技能外国人の受け入れには、初年度に50〜80万円程度のコストがかかるとされています。内訳を把握し、事前に予算計画を立てることが重要です。
| 費用項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録支援機関への委託費 | 月2〜5万円(年24〜60万円) | 支援計画の実施代行。施設が自社で行う場合は不要 |
| 渡航費・査証(ビザ)取得費 | 5〜15万円 | 海外からの招へい時に発生 |
| 住居確保費(敷金・礼金等) | 10〜30万円 | 住居を施設側が手配する場合 |
| 試験対策・研修費 | 3〜10万円 | 日本語教育・介護技術研修等 |
| 在留資格申請費用(行政書士報酬等) | 5〜15万円 | 申請を専門家に依頼する場合 |
国内在住者を採用する場合は渡航費が不要になるため、初年度コストを抑えられます。技能実習2号修了者は試験不要で移行できるため、採用コストをさらに削減できます。
受け入れ後の定着支援・離職防止とキャリアパス
採用後の定着率を高めるには、生活・業務・キャリアの三方向からの支援が不可欠です。受け入れ直後から継続的に取り組むことで、早期離職を防止できます。
定着支援・離職防止の具体的取り組み
- 日本語教育の継続
入職後もオンライン日本語講座や社内勉強会を設けることで、業務コミュニケーションの向上と職場への帰属意識の醸成につながります。月2〜4回のペースで実施している施設の定着率が高い傾向があります。 - メンタルサポート・相談窓口の設置
母国語で相談できる担当者を置くか、登録支援機関のサポートを活用し、文化的ギャップや職場の悩みを早期に解消します。 - キャリアパスの明示
入職時に「介護福祉士取得→在留資格『介護』移行→永住」までのロードマップを示すことが、長期就労意欲の向上に直結します。 - 生活環境の整備
住居・銀行口座開設・携帯電話契約などの生活サポートを入職直後に集中的に行い、日常生活の不安を取り除くことが早期離職防止に有効です。
介護福祉士へのキャリアパスと永住への道筋
特定技能(介護)で就労しながら実務経験を積み、介護福祉士国家試験に合格すると在留資格「介護」へ移行できます。在留資格「介護」では就労制限がなくなり、家族帯同も可能になります。
- STEP 1:特定技能1号(介護)で就労開始
試験合格または免除要件を満たして入国・在留。介護施設で実務経験を積む。 - STEP 2:実務者研修の修了と国家試験受験
3年以上の実務経験と実務者研修修了が国家試験の受験要件。試験は毎年1月に実施される。 - STEP 3:介護福祉士資格取得→在留資格「介護」へ移行
資格取得後に在留資格を「介護」へ変更。就労制限がなくなり、家族帯同も認められる。 - STEP 4:永住申請
在留資格「介護」での一定期間の在留実績を経て、永住許可申請が可能になる。
育成就労制度移行の動向と介護分野への影響(2026年最新)
2024年の入管法改正により、技能実習制度は2027年をめどに「育成就労」制度へ移行することが決定しています。育成就労では、一定条件下での転籍が認められ、特定技能への移行も従来より円滑化される方向です。介護分野においても、育成就労修了者が特定技能(介護)へ移行しやすくなる見込みであり、2026年以降の制度動向を随時確認することを推奨します。
よくある質問
- 特定技能(介護)は何人まで受け入れられますか?
- 受け入れ上限は、事業所の日本人等介護職員の総数が上限となります(1対1が上限)。例えば介護職員が10人の施設では、特定技能外国人を最大10人受け入れられます。
- 技能実習2号修了者は試験なしで特定技能へ移行できますか?
- 介護職種の技能実習2号を良好に修了した場合、介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語試験の3つすべてが免除されます。実習修了後、在留期間内に在留資格変更許可申請を行ってください。
- 特定技能(介護)で働く外国人の給与水準はどのくらいですか?
- 同一業務に従事する日本人と同等額以上の報酬が求められます。厚生労働省の令和5年度介護従事者処遇状況等調査によると、介護職員の平均月給は約30万円(常勤)です。特定技能外国人にも同水準以上の報酬が必要です。
- 訪問介護事業所では受け入れできないのですか?
- 訪問介護・訪問入浴介護など訪問系サービスは、特定技能(介護)の就労対象外です。デイサービスや特別養護老人ホームなど、施設・居住系・通所系サービス事業所への配置のみ認められています。
- 協議会に加入しないとどうなりますか?
- 初めて受け入れた日から4か月以内に加入しない場合、在留資格の更新や新たな受け入れが認められなくなる可能性があります。加入手続きはオンラインで無料で行えますので、受け入れ後速やかに手続きを進めてください。
まとめ
特定技能(介護)は、2040年に約69万人が不足するとされる介護人材の確保に向けた制度です。受け入れには介護技能評価試験・介護日本語評価試験・JLPT N4相当の合格(または免除要件の充足)、協議会加入、支援計画の整備が必要です。初年度の受け入れコストは50〜80万円程度が目安ですが、国内在住者や技能実習修了者の活用でコストを抑えることもできます。定着支援とキャリアパスの明示が離職防止の鍵となり、介護福祉士資格取得後は永住への道も開けます。2027年の育成就労制度移行も見据え、制度変更の動向を継続的に確認しながら採用計画を立てることを推奨します。