特定技能「宿泊」の可能業務・基本情報・外国人要件・採用条件

作成日:2024年10月15日
最終更新日:

特定技能「宿泊」

特定技能「宿泊」は、日本のホテルや旅館における深刻な人手不足に対応するために導入された制度です。外国人材がフロント業務や客室清掃、接客サービスなどで即戦力として働くことが可能となり、全国の宿泊施設で活用が進んでいます。

本記事では、受け入れ可能な業務内容、外国人に求められる試験や日本語力、企業側の支援体制や協議会加入の要件まで、制度のポイントをわかりやすく解説します。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

特定技能「宿泊」で従事できる業務内容

特定技能制度により、宿泊業界でも外国人材の受け入れが可能になりました。旅館やホテルなどの宿泊施設において、接客・清掃・管理など幅広い業務で活躍することができます。制度上は「主たる業務」と「関連業務」に分類されており、それぞれ具体的に定められています。

主たる業務

主に以下のような業務が対象となります。

  • フロント業務(チェックイン・チェックアウトの対応)
  • 宿泊客の案内や館内説明、リクエスト対応
  • 客室の清掃管理、シーツ・リネン類の交換

これらは宿泊施設のサービス品質を直接左右する重要な業務であり、接客マナーやホスピタリティの意識が求められます。

関連業務

主たる業務を支える補助的な業務として、以下が含まれます。

  • アメニティや備品の補充・管理
  • 施設内清掃・簡単な修繕やメンテナンス
  • イベントや団体受け入れ時の準備・サポート

施設全体の運営を円滑に進めるために欠かせない業務です。

特定技能「宿泊」の基本情報

宿泊分野は2019年の制度開始当初から対象となっており、特定技能1号として外国人材が最大5年間の在留資格を得て就労できます。全国のホテル・旅館・リゾート施設などで活用が進んでいます。

雇用できる人数・期間

特定技能1号の在留期間は1年、6ヶ月、4ヶ月単位で更新しながら、通算5年まで就労可能です。雇用人数は施設の規模や運営状況、過去の受け入れ実績などに基づいて判断されます。

特定技能「宿泊」で外国人を受け入れる企業の要件

事業運営の安定性と雇用管理体制

継続的に雇用を維持できる経営状態であることが必要です。また、労働条件や就業規則を明示し、外国人材にとって働きやすい職場環境を整備することも求められます。

宿泊分野特定技能協議会への加入

企業は、宿泊分野特定技能協議会へ加入し、受け入れ人数の調整や情報共有、制度に関するガイドラインの遵守などを行う必要があります。

支援体制(義務的支援10項目)の整備

外国人が日本で安心して生活・就労できるように、企業は10項目の義務的支援(住居確保、生活オリエンテーション、日本語教育支援、相談対応など)を自社または登録支援機関を通じて実施しなければなりません。

特定技能「宿泊」で働く外国人の要件

技能評価試験の合格

宿泊業技能測定試験(JQ)に合格する必要があります。試験は全国各地で年数回実施されており、筆記・実技形式で宿泊業務に関する基礎知識と対応力が問われます。

日本語能力の証明

日本語能力試験(JLPT)N4以上、またはJFT-Basicの合格が必要です。接客時の会話やマニュアル理解に最低限の日本語力が求められます。

特定技能「宿泊」の雇用条件と注意点

実務経験や接客スキルの有無

実務経験があれば即戦力として活躍できますが、未経験でも制度上の要件を満たしていれば受け入れ可能です。事前研修やOJTの充実が定着率に影響します。

支援責任者・担当者の配置

自社で支援を行う場合は、支援責任者と担当者を明確にし、母国語での対応や生活面のサポートに備える必要があります。多くの企業では、業務負担軽減のために登録支援機関への委託を選択しています。

特定技能「宿泊」のよくある質問

Q. 特定技能「宿泊」でできる業務は何ですか?

チェックイン・チェックアウトの対応、客室の清掃、備品補充、宿泊客への接客対応などが対象です。多くは現場で即戦力となる業務です。

Q. 技能実習からの移行はできますか?

宿泊分野では技能実習制度が存在しないため、移行はできません。特定技能評価試験と日本語試験に合格する必要があります。

Q. 日本語能力はどの程度必要ですか?

日本語能力試験(JLPT)N4以上またはJFT-Basicの合格が必須です。接客や社内コミュニケーションを行う上で基本的な日本語力が求められます。

Q. 支援体制は必ず自社で行う必要がありますか?

いいえ。支援体制は登録支援機関に委託することも可能です。制度対応や通訳、生活支援の専門性が求められるため、多くの企業が外部委託を選択しています。

Q. 特定技能2号への移行は可能ですか?

2025年7月時点では、宿泊分野は特定技能2号の対象外です。よって、通算5年間の在留が上限となります。

特定技能「宿泊」まとめ

特定技能「宿泊」は、接客力・柔軟性を備えた外国人材を活用し、宿泊施設のサービス向上と人手不足解消の両立を図る制度です。外国人労働者にとっても、日本での実務経験を積みながらホスピタリティスキルを磨く機会となります。

企業は制度の趣旨を正しく理解し、受け入れ体制や支援の質を高めることで、継続的な雇用と国際化対応に貢献できます。