【2025年】特定技能「工業製品製造業」の可能業務・基本情報・外国人要件・採用条件

作成日:2024年10月15日
最終更新日:

特定技能「工業製品製造業」

特定技能「工業製品製造業」は、自動車・機械・電子部品などの製造現場で、即戦力となる外国人材の受け入れが可能な制度です。

本記事では、対象となる業務内容、試験要件、受け入れ企業側の条件、支援体制の整備ポイントまで、制度の全体像をわかりやすく解説します。技能実習からの移行や、登録支援機関の活用を検討する企業様にとっても役立つ情報を網羅しています。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

特定技能とは

特定技能とは、一定の技能と日本語能力を有する外国人が、日本の労働力不足を補うために特定分野で就労できる在留資格です。現在は「1号」と「2号」の2種類があり、工業製品製造業は特定技能1号の対象です。

登録支援機関とは

登録支援機関とは

登録支援機関とは、特定技能で雇用された外国人に対して、生活支援や相談対応など10項目の義務的支援を企業に代わって実施する機関です。支援の外部委託により、受け入れ企業の実務負担を軽減できます。

特定技能「工業製品製造業」で従事できる業務内容

特定技能「工業製品製造業」従事可能業務

特定技能制度により、工業製品製造業の分野でも外国人材の受け入れが可能となりました。この分野では、自動車・機械・電機・金属・プラスチック製品などの製造工程に関わる業務が対象となります。技能実習で経験を積んだ外国人や、試験に合格した即戦力人材が現場で活躍しています。

主たる業務

「工業製品製造業」における主な業務は以下のような製造ラインの工程に分類されます。

  • 機械加工(旋盤・フライス盤・NC加工など)
  • 金属プレス・板金加工
  • 鋳造・鍛造・溶接などの重工業工程
  • 電子部品の組立・検査・はんだ付け
  • 自動車部品や家電製品の組立・検査・梱包

これらの工程では、製品の品質を左右するため、一定の技術水準と作業精度が求められます。

関連業務

主たる業務を支える関連業務には、以下のような工程も含まれます。

  • 材料の仕分け・搬入・在庫管理
  • 製造工程の補助作業(検査補助・機械補助など)
  • 完成品の梱包・出荷準備・物流対応

関連業務を含めた総合的な現場力が、日本の製造業全体の生産性を支えています。

特定技能「工業製品製造業」の基本情報

この分野では「特定技能1号」のみが対象で、在留期間や雇用上限は制度上の枠組み内で定められています。

雇用できる人数・期間

特定技能1号での雇用期間は最長5年間です。企業ごとの受け入れ人数には上限があり、協議会の定めた「適正な受け入れ数」を守る必要があります。また、1号では家族の帯同が認められておらず、長期的な雇用計画と人材育成支援が重要となります。

外国人が就労するための要件(技能・日本語)

特定技能「工業製品製造業」就労外国人の条件

工業製品製造業で外国人が特定技能として就労するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 技能試験:工業製品製造分野における評価試験に合格(または技能実習2号を良好に修了)
  • 日本語能力:日本語能力試験(JLPT)N4以上またはJFT-Basicに合格

これらを満たすことで、「特定技能1号」の在留資格を取得でき、日本国内で就労が可能になります。

特定技能「工業製品製造業」の受け入れ企業の条件

特定技能「工業製品製造業」受け入れ企業の条件

外国人材を受け入れる企業側にも、制度上の条件や体制整備が求められます。

自社設備・原材料による製造であること

受け入れ対象となる業務は、企業が所有する製造設備および原材料を使用して製品を生産していることが前提です。OEMなど委託中心の生産体制では、対象外となる場合があります。

工業製品製造業分野の特定技能協議会への加入

受け入れ企業は、工業製品製造業分野の協議会への加入が必須です。

協議会では、受け入れ人数の調整や情報共有、ガイドラインの遵守などを通じて、適切な外国人雇用の運営が行われています。

特定技能制度を活用する上で必要な義務的支援

義務的支援10項目

特定技能1号の在留資格で外国人を受け入れる企業には、法令で定められた「義務的支援10項目」を適切に実施する責任があります。これは単なる就労機会の提供にとどまらず、生活面・教育面・相談対応など多角的な支援を通じて、外国人材が日本社会に適応できるようサポートすることが目的です。

義務的支援10項目の概要

以下が企業または登録支援機関が実施すべき10項目です。

支援項目 内容
事前ガイダンスの実施 契約内容・労働条件・生活ルールなどを来日前に説明
出入国時の送迎 空港〜住居間の安全な移動支援
住居確保・生活インフラ支援 住宅契約補助やライフライン契約支援
生活オリエンテーション 防災、マナー、医療機関の利用方法等の説明
日本語学習機会の提供 無料教材の案内や外部講座の情報提供
相談・苦情対応 業務・生活上の悩みに母国語で対応可能な窓口の設置
日本人との交流支援 地域イベント参加の促進や交流機会の創出
転職時の支援 やむを得ず退職する際の再就職支援
非自発的離職時の住居確保支援 契約継続や住居変更の補助
定期的な面談・報告 支援責任者と定期的に本人と面談し、出入国在留管理庁へ報告

支援の実施方法:自社支援 or 登録支援機関委託

これらの支援は、自社に支援責任者・支援担当者を置き自社内で実施する「自社支援」と、外部の登録支援機関に委託する「委託型支援」の2種類があります。

工業製品製造業は業務量が多く、多国籍の人材を受け入れるケースも多いため、多くの企業は登録支援機関への外部委託を選択しています。委託することで、通訳対応や行政報告などの実務負担が軽減され、受け入れ体制をより安定的に運用できます。

支援の質が離職率にも影響

義務的支援を「形式的な対応」にせず、丁寧に実施することが離職防止や職場定着の鍵です。とくに、生活オリエンテーションや相談体制が整っていないと、現場とのミスマッチやトラブルにつながる可能性があります。支援責任者の役割を明確にし、外国人との信頼関係を築くことが制度活用成功の第一歩となります。

特定技能「工業製品製造業」でよくある質問

Q. どのような製造業が「工業製品製造業」の対象になりますか?

特定技能「工業製品製造業」に該当するのは、自動車・産業機械・電子部品・金属加工・プラスチック製品などの製造業です。飲食料品や繊維製品などは別分野に分類されるため、対象外です。

Q. 作業内容に制限はありますか?

高所作業や有資格業務(危険物取扱など)を除き、一般的な製造ライン作業、機械操作、検査、梱包といった業務に従事可能です。ただし、明確に「現場作業」である必要があり、事務作業などは対象外です。

Q. 試験合格以外の就労ルートはありますか?

あります。過去に「技能実習2号」を工業製品製造分野で良好に修了していれば、試験を免除されて特定技能1号に移行することができます。これは多くの外国人にとって実務経験を活かした移行ルートとなっています。

Q. 特定技能2号への移行は可能ですか?

2025年7月時点では、工業製品製造業は「特定技能2号」の対象外です。したがって、最長5年間の就労が上限であり、将来的に制度改正で2号対象となるかどうかは注視が必要です。

Q. 日本語能力のレベルはどれくらい必要ですか?

原則として、日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上、またはJFT-Basicの合格が必要です。現場でのコミュニケーション(報告・相談・安全確認など)を円滑に行うためにも、基本的な日本語理解力が求められます。

Q. 支援体制を外部に委託しても大丈夫ですか?

はい、登録支援機関に委託することが可能です。多くの企業が制度対応・通訳・生活支援の負担を軽減するために外部委託を選択しています。信頼できる支援機関を選ぶことが、外国人材の定着にもつながります。

特定技能「工業製品製造業」まとめ

工業製品製造業は、日本のものづくりを支える重要分野であり、特定技能制度の導入により即戦力となる外国人材の雇用が可能となりました。技術力の底上げや人手不足の解消につながる一方で、企業には受け入れ体制の構築と支援の充実が求められます。

制度を正しく理解し、外国人材と共に成長できる企業こそが、製造業の未来を支える存在となるでしょう。