特定技能「鉄道」分野での外国人材採用ガイド|制度概要と導入ポイント

作成日:2025年5月30日
最終更新日:2025年5月30日

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤拓矢

外国人技能実習制度の管理団体で5年勤務、2019年に合同会社エドミール(AIDE MILLE)を立ち上げる。
600名を超える外国人採用支援実務経験から、制度の理解と外国人人材の現場オペレーションに強みを持つ。建設業、飲食料品製造業、外食業の経験豊富。

特定技能制度とは?

特定技能制度は、深刻な人手不足分野に即戦力となる外国人材を受け入れるため、2019年に開始された在留資格制度です。現在、16の産業分野が指定されており、2024年4月には「鉄道分野」が新たに追加されました。

対象分野において、一定の技能・日本語能力を有する外国人材が最長5年間就労可能となります。

鉄道分野が対象に追加された背景

鉄道業界は少子高齢化の影響を受け、車両整備や施設保守、電気設備点検といった専門職での人材確保が困難な状況が続いています。

こうした背景を踏まえ、国土交通省・法務省は2024年4月より特定技能制度に「鉄道分野」を追加し、外国人材の受け入れを可能としました。

鉄道分野で特定技能が適用される業務

特定技能1号の対象となるのは、以下のような現場作業系職種です。

  • 車両の検査・点検・整備
  • 鉄道施設(線路・構造物)の保守・修繕
  • 電気設備(信号・変電設備)のメンテナンス

いずれも安全性・正確性が求められる職務であり、実務的なトレーニング体制の整備が必須となります。

受け入れに必要な要件(技能・日本語)

鉄道分野で外国人を受け入れるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 鉄道技能評価試験の合格(車両整備・施設保守分野など)
  • 日本語能力試験(JLPT N4)またはJFT-Basicの合格
  • フルタイムの雇用契約(期間の定めあり・最長5年)
  • 法令に基づく支援計画の策定・実施

また、雇用後は定期的な支援(生活支援・相談対応など)が求められるため、登録支援機関の活用が一般的です。

受け入れの手続きフロー

  1. 採用候補者の選定(試験合格者)
  2. 雇用契約の締結
  3. 支援計画の策定・登録支援機関との契約
  4. 在留資格認定証明書(COE)の申請
  5. ビザ発給・来日後の受け入れ開始
  6. 定期的なフォロー面談・支援実施

求人票作成・面接時の注意点

求人票や面接では、以下の点に注意が必要です:

  • 職務内容を明確に記載(車両検査、施設修繕など)
  • 給与・休日・時間外労働の条件を明示
  • 国籍・性別による制限表現を避ける
  • 安全教育体制・研修制度の有無も記載すると好印象

面接時には、日本語理解度や技術的な適性、健康状態なども確認し、業務適合性を慎重に判断します。

導入事例:外国人材の採用を始めた鉄道会社

2024年以降、一部の私鉄や鉄道関連整備会社が、フィリピンやベトナム出身者を中心に車両整備分野での採用を開始しています。

例:

  • 地方鉄道事業者A社:整備士として3名受け入れ、現場教育体制を強化
  • 大手関連企業B社:試験合格者をベトナムから招へい、支援機関と連携

現場への定着を進めるためには、寮完備・先輩社員によるOJTなどの仕組みが成功の鍵です。

法務省・国交省の制度動向と今後の展望

鉄道分野への制度導入にあたっては、国土交通省が主導し、今後は以下のような動きが予想されます:

  • 対象職種の拡大(例:駅務員・運転補助など)
  • 技能試験の実施国の増加
  • 教育カリキュラムの標準化

関連情報は随時、出入国在留管理庁・国交省・JAC(鉄道技能評価機構)などから公表される予定です。

まとめ|鉄道業界の未来を担う外国人材の可能性

鉄道分野における特定技能制度は、2024年から本格運用が始まり、今後の人材戦略に欠かせない選択肢となります。

安全・品質を維持しつつ、持続可能な運行体制を構築するためには、適切な外国人材の採用と育成がカギです。

早期の情報収集と体制整備によって、先行導入企業との差別化を図りましょう。