特定技能「鉄道」分野での外国人材採用ガイド|制度概要と導入ポイント

作成日:2025年5月30日
最終更新日:

特定技能「鉄道」

特定技能「鉄道」は、2024年4月から新たに制度対象となった分野で、車両整備や施設保守など現場の専門技術職において外国人材の受け入れが可能となりました。高齢化や人材不足が深刻な鉄道業界にとって、即戦力となる技能者を確保する新たな手段として注目されています。

本記事では、制度の概要、対象業務、試験要件、受け入れ手続き、支援体制、導入事例、そして今後の展望まで、鉄道分野で外国人材を受け入れたい企業に役立つ情報を網羅的に解説します。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

特定技能制度とは?

特定技能制度は、深刻な人手不足に対応するために2019年に創設された在留資格制度です。製造業、建設、介護などに加え、2024年4月から新たに「鉄道分野」が対象分野に追加され、外国人材が就労可能になりました。

この制度を活用することで、技能評価試験と日本語試験に合格した外国人が最長5年間、特定分野で働くことが可能になります。企業には生活支援や相談対応などの支援体制も求められます。

鉄道分野が対象に加わった背景

鉄道業界は全国的に高齢化が進み、車両整備・施設保守・電気設備の保全など専門職の人材確保が困難な状況が続いています。特に現場作業を担う若手の採用が難しく、技能継承や安全運行の維持に課題が生じています。

こうした背景を受け、国土交通省と出入国在留管理庁は鉄道分野を特定技能の対象に追加。2024年から正式に受け入れがスタートしました。

特定技能「鉄道」で働ける業務

対象となる業務は、いずれも現場作業・設備保守に関わる専門職です。以下の職種が認められています:

  • 車両の検査・分解整備・機器交換
  • 線路や橋梁、トンネルなど鉄道施設の保守・修繕
  • 信号・通信・変電所など電気設備の点検・交換

いずれも安全性・正確性・習熟度が求められるため、OJT研修・作業マニュアル・多言語対応などの教育体制の整備が重要です。

外国人を受け入れるための条件

企業が外国人を特定技能で受け入れるためには、以下の条件を満たす必要があります:

  • 鉄道技能評価試験に合格(整備・保守・電気系)
  • 日本語能力試験N4以上、またはJFT-Basicの合格
  • フルタイムの雇用契約(期間の定めあり/最長5年)
  • 支援計画の策定と義務的支援10項目の実施

支援体制は自社で実施することも可能ですが、登録支援機関に委託する企業が多く、通訳・生活支援・報告義務対応を一括で任せられるのが特徴です。

受け入れまでの手続きフロー

  1. 試験合格者の選定(技能・日本語)
  2. 雇用契約と支援体制(自社or委託)の確保
  3. 支援計画の策定と提出
  4. 在留資格認定証明書(COE)の申請
  5. ビザ発給・来日・就労開始
  6. 定期面談・支援報告の実施

求人・面接時のポイント

特定技能外国人の採用では、求人票や面接内容に以下の点を明記・確認することが重要です。

  • 業務内容を具体的に記載(例:車両点検、線路修繕など)
  • 労働条件(賃金、残業、休日、手当)の明示
  • 性別・国籍による制限は不可(法令違反)
  • 教育体制(研修・マニュアル・通訳有無)の説明

面接時には、日本語理解・安全意識・体力・健康状態なども適性評価の重要ポイントです。

導入事例:鉄道業界での先行採用

2024年の制度施行後、以下のような導入事例が報告されています:

  • 地方鉄道A社:フィリピン人整備士3名を受け入れ。寮とOJT体制を完備。
  • メンテナンスB社:ベトナムからの合格者5名を採用。登録支援機関と連携して日本語研修と生活支援を提供。

導入企業の多くは、先輩社員とのペア作業や定期フォロー面談、寮・食事提供などを行い、定着率向上に努めています。

今後の制度動向と展望

国交省やJACは以下のような制度の拡充を予定しています:

  • 駅務員・運転補助などサービス系職種への拡大
  • 評価試験の実施国拡大とオンライン受験の検討
  • 教育プログラムの共通化・標準化

最新情報は国交省・出入国在留管理庁・JAC(鉄道技能評価機構)の公式発表を随時確認することが推奨されます。

特定技能「鉄道」のよくある質問

Q. 特定技能「鉄道」で認められている業務は何ですか?

主に車両の検査・整備、線路や施設の保守、電気設備(信号・変電所など)の点検・交換などです。いずれも現場の安全運行に関わる業務が対象です。

Q. 特定技能1号での在留期間はどれくらいですか?

通算で最長5年間まで在留可能です。1年・6か月・4か月単位で更新されますが、2号への移行は2025年7月時点では未対応です。

Q. 外国人を雇用する企業に必要な条件はありますか?

はい。技能評価試験に合格した人材との契約、支援計画の策定、登録支援機関との契約(または自社支援体制)などが必要です。協議会への加入も求められます。

Q. 鉄道分野の試験はどこで受けられますか?

現時点では主に日本国内で実施されています。今後は実施国の拡大やオンライン化も検討されています。

Q. 駅務員や運転士も対象になりますか?

現時点では対象外ですが、今後の制度拡大により、駅業務や運転補助業務への適用が検討されています。

まとめ|鉄道インフラを支える外国人材の可能性

特定技能「鉄道」は、現場の人手不足を解消し、次世代のインフラ維持を支える重要な制度です。

外国人材の適切な採用・育成・支援体制を整えることで、安全・品質・持続性の高い運行体制を構築できます。

制度の本格運用が始まった今こそ、先行して対応する企業が人材確保競争で優位に立つチャンスです。