特定技能「造船・舶用工業」の可能業務・基本情報・外国人要件・採用条件

作成日:2024年10月15日
最終更新日:

特定技能「造船・舶用工業」

特定技能「造船・舶用工業」は、日本の造船業界で慢性的に不足している熟練作業者を補うために創設された制度です。高度な技能が求められる造船分野では、溶接・艤装・塗装・配管といった専門工程において即戦力となる外国人材の活用が期待されています。

本記事では、特定技能制度の基本から、対象業務、受け入れ条件、外国人側の要件、支援体制の整備ポイントまでをわかりやすく解説します。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

特定技能「造船・舶用工業」で従事できる業務内容

特定技能制度の導入により、造船・舶用工業分野でも外国人材の受け入れが可能となりました。造船業は高度な技能と安全性が求められるため、制度上でも認められている業務は厳密に定義され、「主たる業務」と「関連業務」に分類されています。

主たる業務

特定技能「造船」における主たる業務は、以下のような造船工程の中核をなす作業です。

  • 溶接(アーク溶接、半自動溶接など)
  • 艤装(機器の取付け・調整)
  • 塗装(防食処理・船体仕上げ)
  • 配管・構内電装作業
  • 鉄工・組立て・精密機械加工

いずれも高度な専門性と安全配慮が求められる業務であり、技能試験や実務経験に裏打ちされた即戦力人材の活用が前提となります。

関連業務

主業務を支える関連業務には、以下のような作業が含まれます。

  • 資材や部品の管理・搬入・在庫管理
  • 作業現場の準備・後片付け
  • 中間検査・品質管理の補助
  • 作業報告書や記録の作成補助

関連業務を含め、造船プロセス全体の品質と生産性を維持・向上させる役割を担っています。

特定技能「造船・舶用工業」の基本情報

特定技能「造船」は、特定技能1号の対象分野のひとつとして制度に位置付けられており、外国人材が5年間の在留期間内で造船現場に従事することが認められています。

雇用できる人数・期間

在留期間は最長5年間で、更新制です。受け入れ可能な人数は、企業規模や生産計画、過去の技能実習生の受け入れ実績などを基に、特定技能協議会の判断を通じて適正な数が決定されます。

特定技能「造船・舶用工業」で外国人を受け入れる企業の要件

外国人を特定技能「造船」として雇用するためには、企業側にも制度上の厳格な条件が求められます。

造船業としての業務実績・安定性

受け入れ企業は、一定以上の業務量・経営安定性があることが前提です。また、対象業務に対応した安全管理体制や教育体制を備えている必要があります。

造船分野特定技能協議会への加入

造船分野の受け入れ企業は、造船業特定技能協議会への加入が義務付けられています。協議会では、制度の適正運用のための報告義務、情報共有、安全教育の支援などを行っています。

義務的支援の実施(登録支援機関委託も可)

企業は、外国人が安心して働き暮らせるように「義務的支援10項目」(住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習機会提供など)を自社で実施するか、登録支援機関に委託する必要があります。

特定技能「造船・舶用工業」で就労する外国人の要件

外国人が特定技能「造船」で働くには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 技能要件:特定技能評価試験(造船分野)に合格、または技能実習2号(造船)を良好に修了
  • 日本語要件:日本語能力試験N4以上、またはJFT-Basicに合格

現場での作業指示理解、安全確認、報告・相談が求められるため、日本語での基本的な会話力は必須です。

特定技能「造船・舶用工業」の雇用・採用条件

造船現場での技能・経験

造船業務は非常に専門性が高く、特に溶接・艤装・塗装といった工程では熟練度が重要視されます。そのため、技能実習修了者や関連分野での職歴がある人材の採用が推奨されます。

安全教育・指導体制の構築

高所作業や火気作業も多い造船業では、外国人に対する安全教育が非常に重要です。定期的な教育機会の提供や、安全確認の言語サポートも必要です。

支援体制の義務を果たす

生活・就労支援を確実に行うため、社内に支援責任者を配置するか、外部の登録支援機関へ委託する体制の整備が求められます。支援の質は、離職防止と定着率向上にも直結します。

特定技能「造船」のよくある質問

Q. 特定技能「造船」の対象となる業務は何ですか?

溶接、艤装、塗装、配管、鉄工などの造船工程が対象です。特定技能評価試験により、実務能力を証明することが求められます。

Q. 技能実習から特定技能へ移行することは可能ですか?

はい、技能実習2号を造船分野で良好に修了した外国人は、評価試験を受けずに特定技能1号へ移行可能です。

Q. 雇用期間は最長何年ですか?

特定技能1号の在留期間は最長5年間です。更新しながら通算5年まで就労できます。現時点で特定技能2号への移行は未定です。

Q. 受け入れ企業に必要な条件はありますか?

造船業としての業務実績、安全体制、造船業特定技能協議会への加入、義務的支援体制の整備などが必要です。

Q. 支援体制は自社で実施する必要がありますか?

自社で支援責任者を設置するか、登録支援機関に委託することで支援義務を果たすことができます。多くの企業は外部委託を選択しています。

特定技能「造船・舶用工業」まとめ

特定技能「造船」は、熟練技術者の高齢化が進む日本の造船業界にとって、次世代の労働力を確保する重要な制度です。外国人材にとっても、高度な技術を習得できる現場であり、技能の国際移転という観点からも意義のある分野です。

企業側は、安全管理や支援体制を整備し、制度を適切に運用することで、外国人材との長期的な信頼関係を構築し、持続的な人材戦略を実現することが求められます。