【2025年最新】特定技能「木材産業」人手不足を救う外国人雇用の実務・制度・導入ステップ
作成日:2025年5月30日
最終更新日:2025年5月30日

合同会社エドミール 代表社員
武藤拓矢
外国人技能実習制度の管理団体で5年勤務、2019年に合同会社エドミール(AIDE MILLE)を立ち上げる。
600名を超える外国人採用支援実務経験から、制度の理解と外国人人材の現場オペレーションに強みを持つ。建設業、飲食料品製造業、外食業の経験豊富。
製材・木材加工・バイオマス発電に至るまで、木材産業の現場では高齢化と人手不足が加速しています。日本人の若年就労者が減少し続ける今、「現場が回らない」「次世代が育たない」と悩む企業も少なくありません。
そうした課題に応える制度が特定技能制度。その中でも、木材産業は2019年の制度創設当初から対象分野として位置づけられており、技能実習からの移行・直接雇用の切り札として注目されています。
本記事では、木材産業における特定技能制度の全体像から、制度活用による人材確保戦略、導入までの具体的ステップを徹底的に解説します。
特定技能制度とは?
2019年に施行された「特定技能」は、日本の深刻な人手不足を背景に設けられた在留資格制度です。業務内容・技能水準・在留管理が法令で厳密に定義されており、即戦力となる外国人を合法かつ長期的に受け入れることができます。
木材産業分野はその中でも、技能実習制度からのステップアップ対象分野として、製造・エネルギーインフラの中核を担っています。
木材産業における3つの対象業種
特定技能「木材産業」分野は、以下の3業種が対象として定義されています。
- 製材業: 丸太を角材・板材へと加工。原木の皮むき、切削、帯鋸機・乾燥炉の操作が含まれます。
- 木材加工業: 集成材、フローリング、家具・建材パーツなどへの加工(NC加工、接着、塗装含む)。
- 木質バイオマス製造業: チップ・ペレット等を製造。再生可能エネルギー素材として注目されています。
いずれも機械操作・手作業の両面が求められ、かつ安全・精度が重要な業務です。現場ではすでに技能実習生を戦力化してきた実績があり、特定技能での直接雇用はその延長線上にあります。
外国人が従事可能な業務内容の例
対象となる作業には、以下のような工程が含まれます。
- 製材ラインでの原木投入、丸ノコ・帯鋸機の操作
- 機械乾燥炉・蒸気処理設備の監視・制御
- 製品のカット、接着、研磨、ラミネート処理
- 集成材・チップ・木粉の袋詰め・搬送
- 寸法チェック、製品検査、梱包・出荷準備
いずれも工程ごとに標準作業マニュアルが整備されており、OJTと教育支援によって外国人材の早期戦力化が可能です。
必要な試験と要件(制度条件)
外国人が「特定技能1号」として木材産業分野で就労するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 技能評価試験(木材産業分野): 製材・木材加工・バイオマスに関する基本知識、安全管理、機械操作の筆記+実技
- 日本語能力試験: JLPT N4相当、またはJFT-Basicで200点以上
また、過去に技能実習を3年修了した者であれば、試験免除で特定技能1号への移行が可能です(いわゆる「移行ルート」)。
企業が満たすべき受入要件
外国人を雇用する企業(特定技能所属機関)は、以下の条件をクリアする必要があります。
- 外国人との書面による直接雇用契約(派遣不可)
- 同業務の日本人と同等以上の報酬水準
- 社会保険の適用(健保・厚年・労災・雇用)
- 1年単位の支援計画(生活・就労・教育)を策定・履行
法令順守に加え、「支援体制の有無」が制度上の重要なポイントとなっています。
登録支援機関の活用と選定ポイント
支援計画の実施が困難な場合、登録支援機関と業務委託契約を結ぶことで要件を満たせます。
登録支援機関は以下の支援を担います:
- 入国前ガイダンス(制度説明、就労条件の理解)
- 住居確保、生活インフラ(携帯・銀行・交通)支援
- 日本語学習の機会提供、定期的な相談対応
- 行政手続き・トラブル時のフォロー
初めて外国人を雇う企業には、支援実績・対応言語・現場理解のある支援機関を選定することが極めて重要です。
木材産業における導入メリット
特定技能人材の導入により、以下のような成果が期待できます:
- 慢性的な人手不足の恒常的な解消
- 高齢化した現場の若返りと活性化
- 作業工程の平準化と標準化の推進
- 地方の木材加工場での安定稼働・離職率低下
すでに導入を進めている企業では「生産性向上」「稼働率95%以上の安定運営」など、具体的成果も報告されています。
今後の課題と成功のポイント
制度上の課題・現場でのリスクに対し、以下のような対策が求められます。
- 在留期間5年: 長期雇用を見据えた継続雇用(例:技能実習→特定技能→技人国)
- 安全管理: 日本語力に応じた多言語マニュアル・ピクトグラム対応
- 定着支援: メンター制度や社内研修の多言語化
制度の「枠組み」に頼るだけでなく、「人材育成」「多文化共生」を軸に運用設計することが成功のカギとなります。
まとめ|今こそ「特定技能×木材産業」の導入を
地方の製材工場、集成材メーカー、チップ製造現場において、外国人材の導入は「検討」ではなく「必要不可欠」な戦略になりつつあります。
技能実習からの切替で制度的なハードルは低く、支援機関の活用により初期負担も最小化可能です。
人がいない時代に“人”を得る選択肢。
それが、特定技能「木材産業」の最大の価値です。