外国人雇用の注意点5選

外国人雇用の注意点5選!600名の支援実績の経験をもとにした失敗事例掲載

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人手不足の解消手段として「外国人雇用」を検討する企業が増える一方で、在留資格の誤解や制度の理解不足が原因で、思わぬトラブルや不許可・罰則につながるケースも少なくありません。

初めて外国人を採用する企業担当者の方でも、「何から確認し、どこに気を付ければよいか」が具体的にわかるように構成しています。外国人雇用を成功させ、長期的な戦力として活躍してもらうための実務的なチェックポイントとしてご活用ください。

合同会社エドミール代表社員・武藤拓矢

合同会社エドミール 代表社員

武藤 拓矢

2018年に外国人採用領域の大手企業に入社し、技能実習・特定技能・技人国の全領域に携わる。のべ600名以上の採用支援実績をもとに、登録支援機関「合同会社エドミール」を設立。2025年には4つの商工会議所で「外国人活用セミナー」の講師を務める。

武藤 拓矢のプロフィール

外国人材側の在留資格を確認する

外国人材が日本で働くためには、在留資格・日本語レベル・職務経験など、労働者側にも満たすべき条件があります。

特に「希望する職種で働ける資格かどうか」「在留期限は有効か」「犯罪歴や違反歴がないか」などの確認は必須です。採用後に不一致が発覚すると、雇用継続が不可能になる場合があります。

偽造在留カードには要注意

近年、偽造された在留カードが国内で出回るケースが増加しています。特に2023年には兵庫県で約120枚もの偽造カードが発見されるなど、社会問題として大きく取り上げられました。

偽造在留カードを所持・使用した外国人本人には、懲役・罰金・在留資格取消・強制退去などの罰則が科されます。

第七十三条の三 行使の目的で、在留カードを偽造し、又は変造した者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。

2 偽造又は変造の在留カードを行使した者も、前項と同様とする。

3 行使の目的で、偽造又は変造の在留カードを提供し、又は収受した者も、第一項と同様とする。

4 前三項の罪の未遂は、罰する。

さらに注意すべき点として、偽造在留カードに騙された企業側にも罰則がある点です。たとえ「偽造カードとは気づかなかった」という場合でも、確認義務を怠ったと判断され不法就労助長に該当されてしまうのです。

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者

つまり、企業側は採用時に在留カードが有効かどうかを確認する法的責任があるということです。採用担当者や管理者レベルでは、「カードの表面確認」だけでなく、オンライン照会による確認など、複数のチェック体制を導入することが重要です。

偽造カードは目視では判別が難しいため、必ず在留カード番号を「出入国在留管理庁 在留カード番号失効情報照会」で照合しましょう。本物の在留カードであれば、照会結果に「失効していません。」と表示されます。

また、出入国在留管理庁が公開している「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方も、チェック時に非常に役立ちます。採用担当者は必ず確認し、社内で共有しておきましょう。

税金の滞納にも要注意

外国人材を採用する際は、税金の未納状況にも注意が必要です。特に転職を複数回行っている場合、本人が悪意なく前職の収入を申告し忘れているケースが珍しくありません。

税金が未納のままだと、在留資格の更新が認められず、最悪の場合は在留継続ができない可能性があります。更新申請時には住民税の納税証明書などが提出必須となるため、未納が発覚した時点で採用・雇用継続に影響が出る場合もあるので注意しましょう。

武藤 拓矢

特定技能専門家

武藤 拓矢

実際に、飲食店で留学生を雇用し特定技能へ在留資格変更を行おうとした際、前職の税金未納が発覚し、申請期限に間に合わず変更ができなかった事例があります。税金管理は本人任せにせず、採用時に確認することが重要です。

外国人材を受け入れる企業側の条件を確認する

外国人材を採用する際は、「候補者のスキルや在留資格」だけではなく、企業側が適正な雇用体制を整えているかが重要な審査ポイントになります。出入国在留管理庁は、「外国人が安心して働き、継続して生活できる環境があるかどうか」を厳格に確認します。不備がある場合、たとえ優秀な人材であっても、ビザの許可が降りないケースがあります。

  • 1. 経営の安定性と継続性
  • 2. 日本人と同等以上の報酬
  • 3. 社会保険・労働保険への加入
  • 4. 業務内容の整合性

1. 経営の安定性と継続性

外国人材を受け入れる企業には、雇用が継続できる財務状態かどうかが求められます。審査では直近の決算書などが提出書類として必須であり、赤字決算であっても、事業計画書や改善計画が合理的であれば許可される可能性があります。

また、企業規模や財務状況に応じてカテゴリー1〜4に区分され、提出書類や審査ハードルが変わります。上場企業などのカテゴリー1に比べ、小規模事業者を含むカテゴリー4は審査が厳しくなりやすいため、事前準備が特に重要です。

2. 日本人と同等以上の報酬

外国人だからといって日本人より低い給与で雇うことは認められていません。同一業務であれば日本人と同等、またはそれ以上の報酬水準が必要です。これは労働搾取防止を目的とした重要な基準です。

地域や職種によって差はありますが、一般的には月給20万円程度〜が最低基準の目安とされています。給与設定が極端に低い場合、不許可となる可能性が高まります。

3. 社会保険・労働保険への加入

受入企業が法令遵守できているかは、審査における最重要項目です。厚生年金・雇用保険・労災保険など、加入義務がある制度に未加入のまま雇用すると、ビザの許可が降りない可能性が非常に高くなります。保険料の滞納や未加入は、企業側の体制不備として扱われます。

4. 業務内容の整合性

採用予定の業務内容が、外国人本人の在留資格で許可されている仕事内容と一致しているかも審査対象です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」のビザで採用した人材を、飲食店ホールや製造ラインなどの単純労働に配置することは違法となります。

企業側が意図せず業務を誤って割り当てた場合でも、不法就労助長罪として罰則対象となるため、事前確認が必須です。

特定技能・技能実習はさらに複雑

特定技能や技能実習制度で受け入れる場合は、上記の条件に加え、生活支援制度の整備、継続的なフォロー体制、過去の法令遵守履歴など、さらに厳しい受入義務が発生します。

制度の要件は複雑なため、受入前に制度理解・体制構築・書類準備を進めることが重要です。詳細については、特定技能の詳細ページをご確認ください。

外国人雇用前に知っておくべき5つの注意点

外国人材の採用は、日本人採用と同じ流れでは進められません。在留資格・制度・文化背景など、多くの要素が関係するため、事前理解が不足しているとトラブルや不許可につながる可能性があります。採用前に以下のポイントを整理し、必要な準備を進めることが重要です。

注意点① 在留資格を必ず確認する

外国人材を採用する際は、まず在留資格が業務に合っているかどうかを確認する必要があります。特に近年は偽造在留カードが社会問題化しており、目視のみで真偽を判断することは不可能です。

そのため、採用時には必ず在留カード番号を照会し、有効性を確認しましょう。確認を怠り偽造カードで雇用すると、企業側が不法就労助長罪の対象となり、罰則を受ける可能性があります。

【重要】
外国人本人の申告や書類を信用しすぎないこと。必ず公式サイトで照会を行いましょう。

在留カード等番号失効情報照会

注意点② 日本語レベルを正しく把握する

日本語能力は、業務遂行や定着率に大きく影響します。代表的な評価方法は「JLPT」「JFT-Basic」「BJT」の3つで、用途や対象在留資格が異なります。

試験名称 対象となる在留資格 特徴・難易度
JLPT
(日本語能力試験)
全体・一般評価 認知度が高く基準として使用される。
【レベル】:N1〜N5
JFT-Basic
(日本語基礎テスト)
特定技能・技能実習 現場指示理解が中心。
【レベル】:A1 / A2(特定技能はA2以上)
BJT
(ビジネス日本語テスト)
技術・人文知識・国際業務 メール・交渉など実務特化。
【レベル】:J1〜J5

業務内容により求められるレベルは変わりますが、現場系ならN4〜N3程度、事務や顧客対応がある場合はN2以上が望ましい基準です。

【注意】 JLPTは読み書き中心で、会話力を測定する試験ではありません。N2保持者でも会話が苦手な場合があるため、面接時は必ずスピーキングチェックを行いましょう。

【公式】JLPT認定基準(N1〜N5)

注意点③ 宗教・文化・価値観の違いを理解する

外国人材の背景は多種多様であり、宗教や文化によって働ける時間帯・食べられる食品・休日・作業内容が異なる場合があります。例えばイスラム教徒は豚肉に触れられなかったり、礼拝の時間を確保する必要があるケースがあります。

企業側が文化的背景を理解していないと、トラブルや離職につながりやすいため、採用前に確認と配慮が必要です。

注意点④ 在留資格ごとの届出義務を忘れない

採用後、企業側には雇用状況の届出義務があります。特に「転職・退職・職務変更」があった場合は、期日内に届け出ないと、企業側も本人側も法令違反となる可能性があります。

制度に応じ提出先が異なるため、受け入れ前に運用フローを整えておきましょう。

注意点⑤ 人材紹介会社・送り出し機関を慎重に選ぶ

外国人採用では仲介機関の質が結果を大きく左右します。手数料目的の悪質事業者を利用すると、情報不足・マッチング不良・支援不足が発生し、早期離職やトラブルにつながります。

過去の実績・支援体制・法令遵守状況・失踪者発生率などを確認したうえで、信頼できる機関を選ぶことが重要です。

外国人雇用で発生するトラブル

外国人雇用は制度・文化・言語の違いが複雑に関係するため、日本人採用と同じ運用ではトラブルが発生しやすくなります。以下は、現場で実際に多い代表的な課題と、予防のために企業側が取るべき対策です。採用前に理解しておくことで、定着率改善やリスク回避につながります。

トラブル① 雇用条件を正確に伝えていない

給与・労働時間・寮費・福利厚生などの条件が曖昧なまま採用すると、入社後に「聞いていた内容と違う」という不信感につながり、早期離職や紛争の原因になります。条件は必ず書面化し、本人が理解した上で合意を得ることが重要です。

【注意】
口頭説明のみは誤認の原因になります。契約書・雇用条件通知書・翻訳資料を用意し、説明責任を果たしましょう。

トラブル② 教育方法が適切でない

言語や文化背景が異なる外国人材は、通常の研修方法では理解が追いつかない場合があります。「察して動く」「曖昧な指示に対応する」といった日本特有のコミュニケーションは伝わりません。写真・ pictogram ・動画・サンプル提示など、視覚で理解できる教育方法を取り入れることで習熟速度が向上します。

【ポイント】
抽象的な指示:「もう少し丁寧に」→ NG
具体的な指示:「バリを取ってから表面を拭き取り、左側の棚に置く」→ OK

トラブル③ 翻訳・整備されたマニュアルがない

現場ルールや業務手順が属人的なまま運用されていると、外国人材は理解できずミスが増加します。採用前に、作業手順・危険箇所・報告フローなどを整理し、外国人向けに翻訳・図解されたマニュアルを準備しておくとスムーズです。

【重要】
マニュアルは「渡すだけ」では定着しません。理解確認・テスト・実技評価をセットにすることで運用効果が高まります。

トラブル④ コミュニケーション不足による孤立や離職

外国人材の早期離職理由として最も多いのが、相談できる相手がいない・指示が理解できないまま業務が進むという環境です。定期面談や質問できる窓口の整備、メンター制度を導入することで、安心感が生まれ定着率が大幅に向上します。

【対策】
・週次または月次面談の実施
・専任担当者(または支援機関)を明確化
・LINEなど母語コミュニケーションツールの活用

外国人雇用のメリット・デメリット

外国人材の採用は、人手不足の解消や事業拡大に有効な手段ですが、日本人採用とは異なる制度・文化的要素が関わるため、メリットとデメリットの双方を正しく理解した上で検討することが重要です。採用前に整理しておくことで、トラブル防止や定着率向上につながります。

外国人雇用のメリット

  • 人手不足の解消につながる
    慢性的な採用困難業界(介護・建設・飲食・製造など)では、外国人材が戦力として活躍しています。
  • 業務へ真面目に取り組む傾向がある
    来日目的が明確であるため、責任感が強く、勤勉な傾向があります。
  • 多言語・海外対応力が向上する
    海外展開や外国人顧客対応が必要な企業では、語学スキルが強みになります。
  • 企業文化の多様性が生まれる
    国籍・文化の多様性は、組織の柔軟性や新しい視点の獲得につながります。

外国人雇用のデメリット

  • 制度理解や手続きに時間とコストがかかる
    在留資格申請・届出・書類管理など、日本人採用では発生しない業務負担があります。
  • 言語・文化差によるコミュニケーション課題が発生する
    指示の伝達ミスや誤解がトラブルにつながる場合があります。
  • フォロー体制が不十分だと早期離職につながる
    住環境・生活支援・業務サポートが整備されていないと定着率が低下します。
  • 制度や法律違反による罰則リスクがある
    在留資格との不一致や届出漏れなど、誤った運用は行政処分の対象となります。

メリットを最大化し、デメリットを最小限にするためには、正しい制度理解と受け入れ体制の整備が不可欠です。外国人雇用は「採用して終わり」ではなく、採用後の伴走・定着支援が成功の鍵となります。

外国人雇用手続きの流れ

外国人材の雇用手続きは、応募者の状況(海外在住・国内転職・留学生など)によって必要書類と手順が異なります。日本人採用とは異なり、入管への申請や在留資格の確認など制度面での対応が必須となるため、事前に手順を理解し準備を進めることが重要です。

海外にいる外国人を日本で雇用する場合

STEP 01

候補者選定・在留資格確認

採用予定職種に対し、候補者のスキル・学歴・資格が該当するか確認します。業務内容と在留資格が一致しない場合、申請しても不許可となります。

STEP 02

労働条件の提示と合意

給与・勤務時間・住居・福利厚生などの条件を文書で明確にし、候補者に共有します。文化差や理解の誤差が起こりやすいため、翻訳対応が推奨されます。

STEP 03

在留資格認定証明書(COE)申請

企業が出入国在留管理庁へ申請します。審査には1〜3ヶ月かかることがあり、書類不備があると再提出が必要となります。

STEP 04

ビザ申請と来日準備

認定証明書が交付されたら、本人が現地の日本大使館・領事館にてビザ申請を行います。同時に住居準備・受け入れ体制・来日スケジュールを調整します。

STEP 05

入国・雇用開始

来日後、社会保険加入・住民登録・口座開設などの生活立ち上げ支援を行い、業務研修へ移行します。受け入れ後のフォロー体制が定着に大きく影響します。

日本で働いている外国人を雇用する場合

STEP 01

在留資格の種類・就労可否を確認

まず、候補者が現在持つ在留資格で希望業務ができるか確認します。同じ就労系資格でも適用範囲が異なるため注意が必要です。

STEP 02

雇用条件説明・契約締結

条件を明確化し、書面で交付します。翻訳版や図解資料があるとトラブル防止に効果的です。

STEP 03

在留資格変更または更新申請

転職や業務内容変更に応じて、入管で手続きが必要です。申請前に就労開始すると不法就労となるため注意してください。

STEP 04

雇用開始・生活支援

既に日本で生活経験がある場合でも、住居・生活ルール・社内制度などの説明は必須です。定期面談やフォロー体制が定着に影響します。

STEP 05

入国後管理・継続サポート

届出義務、在留期限、支援制度の遵守など、継続的な雇用管理が求められます。

外国人留学生を雇用する場合

STEP 01

在留資格の確認・採用可否判断

候補者が希望職種で働ける在留資格か、許可範囲内かを必ず確認します。採用後に違反が発覚すると企業側に罰則が発生するため、早い段階で確認することが重要です。

STEP 02

労働条件の提示・合意

給与・勤務時間・住居支援などの条件を明確にし、文書で交付します。学生の場合、就労可能時間の制限(週28時間)があるため必ず確認してください。

STEP 03

資格外活動許可の確認

アルバイト採用の場合、「資格外活動許可」が必要です。許可がない状態で働かせると不法就労に該当します。

STEP 04

雇用契約の締結

雇用契約書を作成し、翻訳付き契約書の提供や説明機会の確保により誤解を防ぎます。

STEP 05

受け入れ体制の整備と教育

業務マニュアルの整備、生活支援、指示方法の調整、担当者の設置など、安心して働けるサポート体制を整備します。

外国人雇用についてよくある質問

外国人を雇用する場合と日本人を雇用する場合は何が違いますか?
最大の違いは業務範囲の制限です。日本人の場合、雇用契約書に記載された業務内容を実施できます。
一方、外国人の場合は「雇用契約書の内容」に加えて、在留資格で許可された業務範囲の中でしか働くことができません。もし在留資格外の業務に従事させた場合、本人だけでなく企業側も不法就労助長罪(入管法)に該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
外国人は単純労働に就労できますか?
「単純労働=就労不可」と思われがちですが、結論として条件次第で可能です。
2025年時点で29種類の在留資格があり、単純作業を伴う業務に対応できる代表的な資格は、特定技能技能実習の2つです。それぞれ目的や就労範囲が異なるため、詳しくは特定技能と技能実習の違いをご覧ください。
外国人材は離職率が高いというのは本当ですか?
結論として、業界や受け入れ体制によって大きく異なります。受け入れ前の情報共有不足や文化・日本語理解支援が不十分な場合、離職率が高くなる傾向があります。
一方で、研修制度・生活支援・相談体制が整った企業では、日本人より定着率が高いケースも珍しくありません。つまり「外国人だから離職しやすい」のではなく、受け入れ体制の質が結果を左右します。

まとめ

外国人雇用は人手不足解消につながるだけでなく、企業の多様性向上や国際競争力強化にも大きく貢献します。一方で、在留資格の確認や法令遵守、生活サポートなど、日本人採用にはない配慮が必要です。

重要なのは、採用前の制度理解と採用後のサポート体制づくりです。仕組みを整えることで、外国人材は長期的に活躍し、企業の持続的な成長に大きく寄与します。

初めて受け入れる場合や制度に不安がある場合は、登録支援機関・人材会社・行政書士など専門機関と連携しながら進めることで、より安全かつスムーズに採用を進められます。